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「国が9割引きで転売」は本当か? 相続土地“最大93%減額”の実態を読み解く

国に引き取ってもらった土地、実は「最大93%値下げ」でも売れない?相続土地国庫帰属制度の最新動向

「相続時には高い評価額で税金を取っておきながら、国は後から9割引きで土地を転売するのはおかしいのではないか」——最近、こうした声がSNSで話題になっています。

きっかけは、財務省が令和8年6月17日に開催した財政制度等審議会の資料で示された、相続土地国庫帰属制度に関する新しい方針です。あわせて経済メディアでも「最大93%減額」という数字を取り上げた記事が掲載され、注目を集めました。

ただし、財務省の元資料を確認すると、報道されている内容だけでは伝わりにくいポイントがいくつかあります。今回は、話題の背景と実際の制度内容を整理してお伝えします。

そもそも「相続土地国庫帰属制度」とは?

令和5年(2023年)4月に始まったこの制度は、「相続したけれど、管理も売却も難しい土地を、一定の条件のもとで国に引き取ってもらえる制度」です。

誰も住まない実家の土地、遠方の山林、活用のあてがない農地など、「持っているだけで負担になる土地」を手放す最後の手段として利用されています。

ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。空き家が建っている土地や、境界が不明確な土地、管理・処分に多額の費用がかかる土地などは対象外とされています。

国が引き取った土地、実は「売却実績ゼロ」

財務省資料によると、令和8年3月末時点で国庫に帰属した土地は総数2,606件にのぼり、このうち財務局が引き受けたものが1,586件(宅地948件・その他638件)となっています。残りは農用地や森林として、農林水産省など別の機関が管理しています。

一般競争入札による売却を進めているものの、現時点で売却に至った実績はゼロです。理由は、対象となる土地の多くが、人口減少が進む地域の宅地や農地など、そもそも民間でも買い手がつきにくい土地であるためです。

財務省の分析でも、対象地の約85%が面積1,000平方メートル以下かつ評価額500万円以下という、低価格帯の土地に集中していることが示されています。

「最大93%値下げ」の中身——すべての土地に一律適用ではない

報道で話題になった「最大93%減額」ですが、これはすべての国庫帰属地に一律で適用される仕組みではありません。財務省資料によると、対象となるのは以下のような、随意契約による売却が可能なケースに限られます。

  • 買い手が隣接地の所有者のみである場合
  • 買い手が隣接地の所有者以外の1者のみで、かつ予定価格が100万円以下である場合

さらに、面積や評価額が一定の基準(宅地なら面積1,000平方メートル以下かつ評価額5,000万円以下など)を超える土地は対象外で、その場合は鑑定評価によって適正な価格が確認されます。実際、令和8年3月末時点で基準を超え鑑定評価が必要とされた土地は、全体の1.8%(28件)にとどまっています。

値下げの流れも段階的です。まず、測量や地下埋設物調査を行わない「現状有姿(そのままの状態)」での売買を前提に、当初価格から30%値下げします。その後、3か月ごとに買い手が現れなければ、さらに10%ずつ値下げしていき、最終的には当初価格の7%、つまり最大93%の値下げまで想定されています。

相続税評価額と売却価格は、そもそも別のものさし

「相続税は高く取って、後から安売りするのは不公平」という感覚を持つ方も少なくないでしょう。しかし、相続税評価額と実際の売却価格は、目的の異なる別々の仕組みで算定されています。

相続税評価額は、税負担を公平にするための指標であり、実際に市場で売れる価格(実勢価格)とは必ずしも一致しません。特に地方の山林や農地などでは、評価額が付いていても、実際にはその価格で売れないケースが以前から珍しくありませんでした。

また、この制度を利用するような土地は、そもそも高額な相続税の対象になっているケースは多くないとされています。市場価値の高い土地であれば、費用を負担してまで国に引き取ってもらう人は通常いないためです。

まとめ:土地は「持っているだけで得をする資産」ではなくなりつつある

今回の資料が示しているのは、国自身も「売れない土地」の処分に苦労しているという現実です。人口減少や高齢化が進むなか、「相続したくない土地」は社会全体の課題になりつつあります。

国庫帰属制度は、あくまで通常の売却や利活用ができない場合の最後の手段です。もし今、活用の見込みがない土地の相続でお悩みでしたら、国の制度を検討する前に、専門家に相談することで別の売却方法や活用方法が見つかる可能性もあります。まずはお気軽にご相談ください。